日曜日, 6月 21, 2009

【クラウドコンピューティング】 IT輪廻とイノベーション このエントリーを含むはてなブックマーク


集中、分散を繰り返すITの輪廻

 Azureに代表されるようなクラウドOSにおいては、P2PやGridといった主要な技術要素はクラウドOSの中に隠蔽されていてユーザには見えない。これは、サービスを提供するだけというクラウドOSの結実により、もっと大きな視点での集中がおきたことになる。
 クラウドOSに代表される現在の大きな集中への動きは、中島丈夫氏のIT輪廻の話にあてはめると納得がいく。IT輪廻に関しては、IBMerであれば耳タコ状態ではあるが、知らない方も多いと思うので、ここであらためて紹介したいと思う。(中島氏は尊敬するIBMきっての慧眼の持ち主。現在は退職されている。)
 ただし、この記事は2006年10月16日のもので多少古い。また当時のIBMはSOAを推進する立場であったことも付け加えておく。話の本質を理解しないまま、SOAに大失敗している今の現状だけをとらえて、これだめじゃんとかって思わないでもらいたい。

新しい時代を迎えるITインフラ技術 -Web2.0を中心として-

(2006年10月16日)

これまでのシステム(コンピュータ・ネットワーク技術と社会・経済的文脈から創り出される情報システム)の歴史は、集中から分散へという流れの中で発展してきたこと、そしてそれぞれの極においては、「メーンフレーム中心」、「パソコン中心」、「インターネット中心」、「ビジネス中心」という特性が見られてきたことを指摘されました。
そして、現在の「ビジネス中心」の特性においては、SOA(Service Oriented Architeture)を構築することによって、ビジネスとITを統合する形の発展が重要とされることを強調されました。
こうした文脈において、これまで重要とされてきた「作る」、「買う」、「使う」といったDimensionに付け加えて、新たに「組合わす」という側面が加わるというご指摘は、サービス提供者と利用者の間に立つ仲介者(Mediator)の役割が重要になるというご指摘と合わせて、Web2.0へとつながるものであることを 示唆されました。

社会進化の文脈の中で、オープンソースで皆がつながるという意義の重大性や、POA(Participate Oriented Architecture)というネットワークの開放性・外部性をもたらす概念の重要性を指摘された



(関連)IT進化の軌跡



SOAの反省とクラウドのイノベーション


 イノベーションとは、発明、発見、ビジネス、社会価値が合わさって展開されていくものである。前置きでいったように、結局、エンドユーザにSOAやGridを吹聴するだけでは、イノベーションが起きることはなかった。エンドユーザの方としては、ITベンダーには騙されないぞというよりかは、多くはわけわからんという感じだったと思う。SkypeなどP2Pの利用は一部であったものの、ことSOAに関しては、( ゚д゚)ポカーン 状態であり、それでいったい何ができるのか、理解されないまま終わったような感じだ。ITベンダーの方は、SOA!SOA!という掛け声をかけるのに一生懸命で、結局踊らされたのはITベンダー自身だったかもしれないとさえ思える。つまるところ、SOAに関しては、ビジネス、社会価値のポテンシャルはあるものの、活用という難問をエンドユーザに押し付ける形となっているのが問題であったと私は思う。

一方、クラウドでは、利用者から見れば、サービスの提供という具体的な結果だけがもたらされる。クラウド内部では、ScalabilityやAvailabilityをもたらす技術、Fabricを形成する能力といった技術要素は隠蔽されているが、これは開発者から見ても同様で、単にRESTFulなAPIが用意されているのみで非常に易しい環境が提供されている。こういったことからも、クラウドが「サービス提供者と利用者の間に立つ仲介者(Mediator)の役割」として十分に機能することは容易に想像できる。そして、難しいところはすべて雲の上にお任せして、必要なものを必要なときに利用すればいいというような、シンプルなモデルへと変えることができるようになった。これはクラウドのイノベーションといえるだろう。

クラウドは破壊的なイノベーションか

 クラウドが破壊的なイノベーションであるという話をちらほら耳にする。以下のつぶやきにはそれが端的に現れている。


yusukef ・・ BASEトランザクションやCAP定理とかのファンダメンタル理解しないまま、フレームワークがあるからといってGAE/Jのアプリを設計&実装して大失敗して、クラウドだめじゃんとかって言わないでね


 これまでの手法が全く通用しないからという理由で破壊的であると決め付けるのは短絡的である。エンティティとURIが大事という、Reflexの設計思想は、RESTfulな設計に触発されたものだが、そのベースはWebサービスに遡る2004年頃の着想である。Reflexは流行っていないし、フレームワークが多くの人に利用されているわけではないが、RESTfulな設計という意味では共通するものがある。例えば、この頃、世界中の多くの開発者が同じようにインスピレーションを得て、2006年頃にはよく似たプロダクトが登場することになった。まず、IBMのsMashがReflexに非常によく似たものだったし、(関連記事)また、ReflexがGAEのJDOと親和性が高いのは設計思想が同じだからである。そして、Azureも同様の思想のもとでRESTfulなデータストレージを提供している。これは本当にビューティフルだなあと思う。Windows Azure ストレージサービス

 ここで、少々苦言をいいたい。

 クラウドが破壊的であると感じている人は、2004年頃に何を考えていたかを思い出すといいだろう。RDBが君臨している時代に、オブジェクト指向やRESTfulな設計に思いを馳せることは難しかったかもしれない。なので、あまり強くはいえないけれども、2006年になってもなお盲目的にEoDに邁進するコミュニティを見て、私なりに危機感を感じていたことは事実であった。

楽をするために苦労を厭わない人たち - Seasarカンファレンス(秋)

思考停止に陥っていたJavaに対して、一方のXML開発者はまだましだった。

XML開発者の日


まあ、過去のことは過去のこと。大切なのは現在、そして未来である。ほれいわんこっちゃないと私からいわれないよう、めげずに頑張りましょう!

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