木曜日, 6月 18, 2009

【クラウドコンピューティング】 エンタープライズへの移行シナリオ このエントリーを含むはてなブックマーク


M先生がメーリングリストで、クラウドの「楽観的」シナリオを述べられている。
全文いい内容なので転記します。


議論が、収束しそうですので、問題提起。

>> ですからエンタープライズ分野の情報サービスの
>> クラウドへの移行はなかなか進まないんじゃありませんかね?
>
> ええ、進まないと思います。エンタープライズは無理でしょう。

本当でしょうか?

僕は、クラウドの本当のインパクトは、エンタープライズがパブリック・クラウ
ドを使い始めたときに起きると思っています。もちろん、今すぐに、それが起き
るとは思っていません。来年から、変化が始まるのではないかと。始まりの始ま
りです。それは、同時に、従来型のシステムの終わりの始まりです。

もっとも、一気に勝負がつくとも思っていなくて、散発的な前哨戦からはじまっ
て、いくつかの激しい局地戦があって、戦線が拡大していくというようなイメー
ジです。基本的には、設備更新のサイクルが一巡する4-5年先、二巡する8-10年
先が、勝負の節目になるはずです。あるいは、次の15年が必要かもしれません。

僕らは、実は、同じような経験をしていています。メイン・フレームとUNIXを中
心としたオープン系のシステムの対抗の歴史が、まさにそうだったと思います。

今回は、パブリック・クラウドとプライベート・サーバの対抗が、UNIXとメイン
フレームの対抗と、同じような「タイムスケール」で進むのではという話をして
みたいと思います。今年の話でも、来年の話でもなく、一定の時間をかけて、し
かし確実に変化が進むだろうという、「長めの時間軸」での予測です。

この前「UNIXの思い出とCloud OS」(タイトル勝手に変えられましたが)という
原稿を書いていたのですが、僕らがUNIXを始めた30年前には、それがエンタープ
ライズで使えるようになるとは、誰も考えていませんでした。

それが、約20年前に、Sunが起業し、SybaseやOracleがUNIX上のデータベースを
商品化します。その少し前に、PCが生まれ、マイクロソフトがPC上のOSで成功を
収めます。現在のIT業界のメインプレーヤは、この時期に生まれています。彼ら
の成功の過程は、基本的には、それまでのメインフレームの牙城が崩れる過程と
表裏一体です。

もちろんメインフレームは生き残っていますし、COBOLだっていまだに元気で
す。ただ、それは、残存としてですね。(社会経済的には、こうした残存物を
「ウクラード」と呼びます) ウクラードは残っているものの、この対抗は、基
本的には、「一定」の勝負がついたように、僕は思っています。

エンタープライズのコンピュータといえば、メインフレームしかなかった時代は
終わりました。といって、メインフレームの旗手だったIBMがいなくなったかと
いうとそうじゃないですね。それは、IBMが賢明にも、オープンシステムへのレ
ンジを意識的に広げたからです。もっとも、UNIVACとかHoneywellとか、ちょっ
と記憶があいまいなのですが)いくつかのメインフレーマは、姿を消しました。
業界二位だったDECも、なぜか事業に失敗します。大変動があったんです。

僕は、現在のパブリック・クラウド vs プライベート・サーバの対抗も、同じよ
うな推移をたどると思っています。20年前のSunやOracleやマイクロソフトに、
メインフレーマは脅威を感じたでしょうか? 多分、ノーです。15年前はどうで
しょう? まだ、現在のような流れは明確ではなかったと思います。10年前は、
前哨戦の時期が終わり、局所的な激戦が戦われます。Internet、Javaが登場し、
サーバーサイドの流れが強まります。

大事なことは、攻める側・守る側の立場は、会社レベルで言えば、固定的なもの
ではないし、当初の戦力の違いは、技術革新によって、新しい兵器が投入される
ことで、大きく変わります。10年-20年のスパンで考えれば、クラウドでも、同
じことが、きっと起こります。

あまり正しい比較ではないのですが、GoogleやAmazonやSalesforceは、当時の新
興勢力としての、Sun,Oracle,Microsoftに対応するし、従来の立場を転換するこ
とで、オープン系の勝利に貢献したIBMの役割を、今のマイクロソフトが果たそ
うとしているように見えます。

基本的には、システムの変化は、産業循環の長い周期の中で議論しないといけな
いと思っています。「エンタープライズ分野の情報サービスのクラウドへの移行
はなかなか進まない」「エンタープライズは無理でしょう。」というのは、現状
の認識としては、正しいでしょう。でも、それはショート・レンジの認識です。
この現状が、この先も続くとは、僕は思っていません。

むしろ、技術論よりは、営業の立場に立つと、両者の戦いが、どう進んでいくの
かがよく見えてくると思います。

現時点では、Amazonを除いては、パブリックなクラウドを利用したシステムの提
案は、難しいです。売るものがないのですから。ここでは、「エンタープライズ
は無理」というのは、正しいのです。

来年は、どうでしょう。ちらほら、商用化されたパブリック・クラウドを部分的
に利用した提案が、出てくるでしょうね。対抗陣営としては、営業レベルでは、
「エンタープライズでは無理」というセールス・トークが、重要になります。ク
ラウドに懐疑的なイデオローグは、今より、重用されるでしょう。多分、大勢と
しては、そちらが優勢でしょう。

さ来年は、どうでしょう。きっと、二年もあれば、模様眺めしていたり、パブ
リック・クラウドを批判していた人たちの一部は、クラウドでもプレゼンスを示
さなければと考え始めるでしょう。でも、大勢としては、現状維持勢力が強いで
しょうね。ただ、営業での激しい戦いを反映して、セールスとしては、不安をあ
おるだけでは営業が出来ないと、価格でも対抗しようとするでしょう。でも、そ
れは、ボディ・ブロウのように、自分のビジネスにきいてくるはずです。クラウ
ド側では、その時点での最適な、組み合わせを提案の中心にするようになるで
しょう。

まあ、このあたりでやめておきましょう。これぐらいが、僕の一番、「楽観的」
なシナリオです。

0 件のコメント:

 
© 2006-2015 Virtual Technology
当サイトではGoogle Analyticsを使ってウェブサイトのトラフィック情報を収集しています。詳しくは、プライバシーポリシーを参照してください。