Winny判決で驚いたのは、有罪となったということより、その刑の理由だ。「金子氏の著作権侵害幇助の企図は認められないが、著作権侵害のために利用されることを知りながら何も対策を講じなかったから有罪」だという。要するに、大変有害なソフトであるが改善されないから有罪だという。いくら作者だからといっても、それは無理というもの。P2Pネットワーク上のファイルを消すのは、技術的に不可能に近い。判決が逆ならまだよかった。ソフトが悪用されて侵害されたのは他者によるものであり、それを防ぐには技術的な理由があって対策を講じられなかった。なので、そのことについては罪には問えないが、著作権侵害幇助の企図があったので有罪。ソフトはあくまで人が利用するものであり、どのように使ったかを問題とする、いわゆる「包丁」の例えを適用するとわかりやすい。このままだと、銃刀法違反のような法律がITにも適用されるんじゃないかと不安を感じてしまう。
特定のソフトであればまだいい、実は、弊社で開発しようとしているReflexにも適用されてしまうんじゃないかと心配している。Reflexは、Overviewの「何が嬉しいか」を見てもわかるように、P2PをベースにしたCGMの管理ミドルウェアを目指したものだ。CGM(コンテンツ)があらゆるノードでキャッシュされているが、IDで特定できて、誰がいつ作成したかを確認できる。特定のノードにいなくても、どっかにキャッシュされていれば、自動的に検索されてダウンロードできる。暗号化とPKIを使うことで、オープンな環境で安心して商取引ができることを目指したものだ。しかし、適当な署名を作って公開することも、やろうと思えばできる。当然、証明書が偽造されていることが分かるので、信用できないことはすぐに分かるのだが、それがたとえ信用できないものであっても、リスクを承知で入手することはできる。すなわち、匿名のファイル交換が実質的にできてしまうのだ。このソフトを公開したらどうなるのだろう。私は著作権幇助を企図していないけれども、利用者はどう使うか分からない。判決を知った今であれば、もちろん、匿名のファイル交換ができない仕組みにするとは思うが、もし知らないで公開してしまったら、金子氏のように有罪となってしまうのだろうか。私は、こんなリスクをしょってまでReflexを開発するつもりはない。設計の大幅な見直しか、あきらめざるを得ないだろう。私のように感じている者は日本中に大勢いるはずだ。司法は、著作権を主張する者の利益もそうだが、日本のIT業界全体の利益も考えて判断すべきだと思う。今回の判決は、イノベーションに取り組んでいるIT技術者のモチベーションに大きく影響を与えることだろう。
原爆を発明したアインシュタインは有罪か、使った者が有罪か、それとも両方なのか。
アインシュタインを有罪とする法律が当時はなかったから無罪だという人がいたが、どうなんだろう。
Winnyは原爆のような存在で、昨日、それを発明した人に罪が言い渡された。
著作権侵害幇助の企図は認められないが、大変有害なものであり、改善されないので有罪だそうだ。
木曜日, 12月 14, 2006
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