水曜日, 10月 29, 2008

【クラウドコンピューティング】 Microsoft Azure このエントリーを含むはてなブックマーク


丸山先生のPDC報告です。


ロスアンゼルスで開催されている、MSさんのイベント、Professional Developer Conference 2008に出ています。
他のメーリングリストに投稿した内容ですが、次回の僕のCloud研究会での報告に関連していますので、ダブル・ポストします。
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初日のレイ・オジー(チーフ・ソフトウェア・アーキテクト)のキーノートは、
すべて、同社のクラウド製品、Azure Software Platformにあてられました。MS
が、公式にCloudサービスへの参入を表明したことは、とても大きな意味のある
ことだと思います。すでに、日本のメディアにも、いろいろな紹介が行われてい
ると思いますが、僕には、とても面白いものでした。

どんなものかといわれると、AmazonのEC2/S3+SimpleDBにGoogleのGoogle App
Engineを足して、もっと、使いやすくしたようなものです。サービスの中核は、
前から僕が予想していたように、SSDS(SQL Service Data Service)によるデー
タ・サービスです。

AmazonのEC2との対比で言うと、EC2が潜在的には前提にしていた、Cloud上での
サーバやディスク等のリソース管理の機能を、明示的に、「CloudのOS」として
のAzureが担うことを明確にしています。EC2では、Cloudの利用者は、具体的に
は、AmazonのCloud OSが提供する、個々のマシンを利用するのですが、Azureで
は、MSのCloud OSであるAzureの提供するサービスを利用することになります。
同じだろうと思うかも知れませんが、その違いは、大きいのです。

Google App Engineでも、利用者は、知らないうちに、Googleの提供するCloud
サービスを利用しているのですが、Azureでは、Cloudサービスの利用は、もっと
Cloudのリソースの利用に、自覚的です。例えば、EC2のように、個々のサーバ利
用を意識する必要はないのですが、Webのサーバをいくつ立てて、ビジネスロ
ジック用のプロセスをいくつは知らせるかというような設定が、Azureでは可能
になります。その点では、僕のCloud研究会の第一回の資料で指摘した、「Multi
-TierアプリのScale-out戦略」の図を見てもらうと、そのイメージはわかりやす
いと思います。Cloud内のいくつかの基本的なサービスのブロック(ロードバラ
ンサ、Web、Worker)のコンフィグが、AppLogicのように、簡単にできます。

この点では、Azureは、Google App Engineと同様に、エンタープライズでの開発
の中心である、Webアプリの開発のCloud化に、明確に焦点を合わせています。
MapReduceのような、汎用の分散アルゴリズムのサポートは、ありません。た
だ、Cloudで動くWebアプリの開発、deploy、実行は、Google App Engineより、
はるかに、簡単で、直観的です。

余談になりますが、キーノートでは、Cloud上で動く、Hello Worldのデモが行わ
れたのですが、これはちょっとわかりにくかったかも。だって、Hello Worldの
文字列が、直接ページに埋め込まれているのか、あるいは、隣のサーバが返す
ページに入っているのか、はたまた、Cloudから来たものかは、見ている人には
わかりませんからね。もっとも、このあたりは、Cloudを概念的にとらえること
の難しさを示しているのかも知れません。

その他、いくつかの特徴があります。思いつくままに触れると、

・Cloud アプリの開発環境の提供。
・Cloud上でのユーザの認証、アクセス管理。(OpenIDを使うのだと思います)
・既存のWeb Appsをクラウド化する手段の提供。
これは、.NET Servicesという製品群にまとめられていますが、以前の
BizTalkの機能をまとめたものですね。個人的には、SOAの発展形としての
Cloud利用という切り口が明確で、面白かったです。
・Cloud内のサービスの連携に、非同期なメッセージングを使うとか、Queuを
使うという話も、なるほどと思って興味深いものでした。もっとも、この
あたりは、数年前から、SOAの世界では言われてきたもので、大事だと思い
つつ、僕は、爆睡してしまいましたが。
・MSのOffice製品群のCloud利用を可能にする、SharePointとの連携。
・企業内(On Premise)既存サービスと、Cloudとの区別と関連付け

最後の点は、IBMさんにしろOracleさんにしろ、既存の製品群とCloud利用が、あ
る点では競合するという問題を、MSさん自身も抱えているという点を示している
訳で、面白い問題だと思っています。

聞いていたひとの反応は、「地味だった」という声が多かったように、思いま
す。以前、マルメでも書いたのですが、このPDCの焦点の一つが、MSのCloudへの
参入の表明にあるという意識は、事前には弱かったのですが、まだ、ちょっと実
感がわいていないようです。(Vistaの後継としてのWindows 7に対する関心の方
が、ずっと高いですね) 講演者も、例えば、Cloudにとって、本質的に重要
な、SSDSのScale-outする特徴に、踏み込まないまま、SSDSの説明をしようとし
たり、MS内部でも、明確な語り口が統一されていないようなところもありました。

ただ、初日のキーノート、まるまるすべてAzureに使ったわけで、それなりに関
心は高まったとは思います。Bill Gatesが引退して、はじめてのPDCらしいので
すが、僕には、別の意味でも、歴史的な会議になるだろうと思っています。

http://www.microsoft.com/azure/solutions.mspx
に、すでに、情報が出ています。是非、チェックしてください。

P.S. CloudのSOA利用のセッションは、激しく寝てしまったのですが、
寝ようと思って出た、「C#の未来」というセッションは、とても
面白かったです。C# 4.0って、Dynamic言語に対応するんですね。
「静的な型として、dynamicという型を導入するんだ」という彼の
説明に、つい笑ってしまったのですが、なかなかの人でした。

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